おじさんに化けたカラス
道の反対側から見た時は、コンビニから作業服を着たおじさんが袋を提げて出てきて、ゴミ置き場横の細い私道を通ってマンションに入って行くところだった。
いったん街路樹に遮られてそこは死角となり、再びゴミ置き場が視界に入ると、その真ん前にカップラーメンの容器が一つ置いてあった。
歩道のど真ん中である。
ゴミなら捨てようと道路を横断して近付いてみると、
なんなら美味しそうだ。
私は困ってしまった。
ゴミなら拾い上げて隣のコンビニのゴミ箱に捨てればすむことだ。
しかし湯気をあげているラーメンごと捨てるわけにはいかない。
それになぜ作りたてのラーメンが歩道の真ん中に放置されているのか、まるで検討がつかない。
何となく素通りもできず辺りを見回すと、突如バッサバッサと音をたてて巨大なカラスがラーメンの前に立ちはだかった。
そして時おり威嚇するようにこちらを睨みつつ、
私はハッとした。
コンビニから出てきたおじさんはどこに行った?
おじさんが入って行った細い道から、すぐにこの巨大なカラスは
さっきまでなかったカップラーメンが、ほんの数秒の間に歩道の真ん中に出現していた。
この二つのヒントから導き出せる答えはただ一つ。
カップラーメンを欲したカラスがおじさんに化けて、コンビニで買
湯を入れて三分待ち、縄張りであるゴミ置き場の前にラーメンをセッティング。
いったん人目につかない奥に引っ込み、カラスの姿に戻ってラーメンをつつこうとしたら私が横取りしようとしていたように見え慌てて舞い戻った…
そう解釈するのが自然だと思うがどうだろう?
「おじさん…見ちゃった。」
小声で話しかけてみると、ラーメンの汁を思い切り飛ばされた。
やっぱり図星だったのか。