丘の上のカナブン
洗濯機の上にカナブンがいた。
正確にはその時カナブンとは認識していなかったので、頑丈そうな黒い大きな虫が洗濯機のなだらかな蓋をよじ登っているのを目にした時は、悲鳴をあげそうになった。
眼鏡を外していたため、一瞬Gに見えたのである。
しかしGよりもコロンとした厚みのある体とやや緑がかった光沢がそうではないと脳に告げ、私は正気を取り戻した。
透明なビニール袋を持ってそろそろと背後から近づき、ファサーっとかぶせる。
気配を消すのは得意技だ。
羽をビャビャビャビャーっとされる前になんとか捕獲に成功。
袋をファサーっと返しその口をしぼって持ち、マンションの外へ。
しばらく歩いたところでカナブンを外に出してやった。
空のビニール袋を持って歩いて帰る。
手には汗をかき、呼吸も浅くなっていた。